今のわたしにとって気づきの多い本でした。
〜blog『relax&focus』より転載〜
宇治にある『遊ぶ鉄工所』
“日本最強のクリエイティブ集団が
京都の町工場にあった”
本の帯に記された言葉です。
そして、中を読み進めると
たしかにいわゆる鉄工所とは
まったくイメージの異なる
運営スタイルの会社でした。
この本は、京都府宇治市にある
HILLTOP株式会社の
山本昌作副社長の著書です。
自動車メーカーの孫請けだった油まみれの
鉄工所が下請けからの脱却を決意し、
「多品種単品のアルミ加工メーカー」に
変化を遂げた過程とその変化を実現した
強い想いが記されています。
多品種単品を可能にするのが
「ヒルトップ・システム」と呼ばれる、
多品種単品・24時間無人加工システムです。
オーダーに応じてデスクでプログラムを作り、
それによって機械を稼働させる
従来の鉄工所では、就業時間の8割が
機械の前、2割がデスク作業という比率を
こちらの会社では逆転させるべく、
「加工中は機械の前に立たない」を
実行されました。
その結果、職人の腕に左右されない、
高い品質を保った製品の短期納品を
実現されています。
非常識な経営手法実現のカギ
通常の場合、人手も資金も乏しい中小企業の
戦略としては『パレートの法則(80:20の法則)』に
したがって、主要品目に力を注ぐことで
高利益体制を作り上げる、いわゆる
「選択と集中」がお手本とされています。
が、こちらではそうではなく
“多品種単品”というスタイルを
採られています。
いわゆる『ロングテール戦略』です。
正直、『ロングテール戦略』については
人も資金も潤沢にある大規模な企業が
その地位を確固たるものにするために
狙う戦略だと認識していましたが、
この本を読むとその認識の浅さを
恥じるより他ありません。
中小企業でも、コンピューターと
機械を正しく機能させることで
ニッチを幅広くすくい上げることが
できることを証明しています。
そして、こうした体制を実現したのは
著者の『脱下請け』に対する強い決意です。
「こうありたい」と思う気持ちが
単なる願望レベルではなく
細胞レベルまで落とし込んで
取り組まれた様子がうかがえます。
この企業の変化をおっていくと
「こうありたい」という
強い気持ちがまず最初にあって、
それを単なる夢物語ではなく
現実に叶えられるものと信じ、
着実に駒を進めていくことが
叶えるための最短の道筋であると
あらためて感じました。
「それはムリ」と切り捨てた部分
と同時に、自分の事業について
「本当に自分のありたい姿を
実現するために活動できているか」
「現状に慢心して足を踏み出すことが
億劫になっていやしないか」
こうした感情が湧き出てきます。
「選択と集中」という言葉を
自分に都合のいいように解釈して
自分の得意分野だけに範囲を限定し、
・経営者ファーストではないのではないか、
・「経営者のお困りごとに対応する」という本質を
置き去りにしてしまっていないか、
という疑問を抱くきっかけになりました。
もちろん、自分自身がそれぞれの経営者に合わせた
幅広いサービスを提供する『ロングテール戦略』を
選択するかどうかはまた別の問題です。
自社(自分)の体力・時間という問題もあります。
ただ、「それはムリ」と決めつけて
切り捨てていた部分について
もう一度掘り起こして考える
きっかけになりました。
今のわたしにとってこの本は
“学び”という側面もありますが
むしろ“気づき”という点で
多くのものを得ることができました。
著者の熱量にあたるだけで
活力をもらえます。
現状からさらに一歩足を出したい方に
オススメの書籍です。