節税に生命保険加入は無意味です。
〜blog『relax&focus』より転載〜
生命保険の売りは保障
節税目的で生命保険加入を
検討される方もありますが、
全力で止めます。
節税効果なんてないからです。
「支払ったお金が解約返戻金として返ってくる」
このときに100の支払に対して
返戻金として120が返ってくるなら
(運用目的で)加入する意味はありますが、
保険には“保障”という価値提供があるため
返戻金は必ず目減りします。
返戻金は必ず100を下回ります。
返戻率のいいものでも
だいたい80〜85%くらいでしょう。
それでも加入を止めない場合があります。
それは、経営者が“節税”ではなく
“保障”を求められている場合です。
余剰金を定期預金で貯めても、
いざというときには
貯めた分しか使えません。
しかし、保険だと加入してすぐに
保障が垂直に立ち上がるので
保障という役割からは
非常に優れています。
だから、生命保険への加入は
“保障”が必要な場合に限ります。
掛け金と返戻金の差額が
万が一の際の保障への対価です。
掛金が損金になる⇒×
100が80になって戻ってくるわけですが、
そこに損金という魅惑のキーワードが
絡むと、なかなかややこしくなります。
節税商品として保険を売りたい方は
「100を支払ったときに
税金が35安くなっているので
実質的には65の負担で済んでます」
「65が80になるんだから
利回りは約123%です!!」
という風に話をされます。
が、それは入り口の話。
出口はどうなっているでしょうか?
80が返ってきたときに
やっぱりそれに税金が
かかるんです。
80の35%は28。
つまり、80の返戻金を
受け取るものの、
28は税金として
出て行きます。
そうしたら、
実質手取りは52です。
65が52になるわけで、
やっぱり80%しか
戻ってこないんです。
生命保険の加入と返戻で起きるのは
課税を後ろに繰り延べているだけ、
つまり課税時期を後ろに延ばす代わりに
20%近くもの手数料を支払っていると
いうのが生命保険加入の実態です。
節税の効果が発揮されるとしたら、
将来大幅に税率が下げる場合に
限られるでしょう。
例えば、現在は35%程の税率ですが、
解約返戻金を受け取ったときに
税率が20%にまで下がっていると
どうなるでしょう?
80の返戻金に対して
16の税金がかかり、
実質手取りは64です。
だめですね。
65が64ですから
これだと負け試合です。
18%だと、かろうじて
65.6を手に入れるので
元本を超えることになります。
つまり、たとえ将来税率が
20%まで下がったとしても、
節税なんて効果は生まれません。
だから、節税目的での生命保険加入は
まったく無意味な代物といえます。
退職金支給⇒×
次に出てくるのが、
「返戻金を受け取る際に
退職金を支給すれば、
益と損が相殺されて
税金が発生しませんよね?」
なんていうロジック。
これもよさげですが、
生命保険加入でなくて
定期積金でも得られる
節税です。
定期積金でコツコツ貯めておいて
それを退職金の支給に使えば
そのときに退職金分だけ
損金(経費)が増えて
税金は安くなります。
どうあがいても、
生命保険による税への効果は
『課税の繰延(後回し)』
そのために20%もの高額の
手数料を支払うわけで、
経済的側面からの合理性が
あるとはいえません。
最後に
世の中には本当に効果のある
節税も一部ありますが、
大半は『課税の繰延べ』
要は後回しにすぎません。
一見複雑怪奇なテクニックを
駆使しているかに見えますが、
支払ったものが返ってくるもので
払ったときに経費になるなら
返ってきたときに売上に
ならないわけがないってこと。
本当の節税かどうかを見破るコツは
「最後はどうなるか」を考える
習慣を身につけることです。
節税策は、そのときだけでなく
それが未来に与える影響も加味して
検討する必要があります。
うまい話はそうそうありません。
最後にどうなるか、を
きちんと検討してから
踏み切るようにしましょう。