設備投資の際に支払う高額の消費税は取り返すべきか否か。
〜blog『relax&focus』より転載〜
設備投資にかかる多額の消費税
800万円の工事を行ったとします。
すると、8%の税率で消費税が加算され、
支払総額は864万円。
64万円の消費税を支払います。
この64万円があなたの税金の
納付額からマイナスされれば
うれしいですよね。
それができる可能性があります。
キーワードは
「課税事業者」「原則(本則)課税」
です。
消費税の基礎知識
事業者の立ち位置
国内の事業者は次の3つに分類されます。
①課税事業者&原則課税
②課税事業者&簡易課税
③免税事業者
「課税事業者」というのは
お客さんから預かった消費税を
国に納める義務がある事業者のこと。
「免税事業者」というのは
お客さんから預かった消費税が
(国に納められることなく)
自身の売上になる事業者のこと。
「原則課税」「簡易課税」というのは
納めるべき消費税の計算方法のちがいです。
特徴をざっくりと並べるとこんな感じ。
①〜③のうち、支払った消費税が
計算要素になるのは①だけです。
さきほどの64万円を
取り戻せるのは①だけなんです。
ですので、64万円を取り戻すなら
①にならないといけません。
意図的になれるかというとなれます。
②から①への変更
現状が②であれば、
前年までに“簡易課税選択不適用届出書”を
所轄税務署に提出すれば①になれます。
ただし、このときには本当にそれが
得策かを考える必要があります。
「簡易課税」という計算手法は
2年前の売上が5,000万円以下の
事業者にだけ認められる計算制度で、
上の図でも示したように
預かった消費税に決められた割合を
乗じるだけで納付税額が計算できます。
そのうえ、ほとんどの事業者が
これを適用することで
税額が低く抑えられます。
②から①に変更するということは
「簡易課税」の優位性を捨てて
「原則課税」に切り替えるということ。
64万円を取り戻すための決断で
実際の税負担額が増えてしまわないように
(税理士への申告依頼コストなども含めて)
事前にシミュレーションすることが必要です。
②で2年以上事業活動してきた事業者が
効率よく64万円の恩恵を狙うなら、
設備投資の直前で課税期間を3ヶ月に短縮して
設備投資の引渡しがある期間だけ①になり、
すぐに②に戻ってしまうことですね。
こうすれば、3ヶ月間だけ①の立ち位置で
64万円の恩恵を受けて、すぐに②に戻って
従来の恩恵を受けることができます。
この場合、3ヶ月に一度確定申告をするという
別の負担が発生しますので注意が必要です。
③から①への変更
現状が③であれば、
前年までに“課税事業者選択届出書”を
所轄税務署に提出すれば①になれます。
この場合にも、この選択が
はたして有効かどうかを
検討する必要があります。
③というのは、お客さんから預かった消費税を
そのままポケットに入れることができるかわりに
仕入先や業者に支払う際に負担した消費税が
納税額の負担軽減に働かないという立ち位置です。
①というのは、お客さんから預かった消費税から
仕入先や業者に支払った消費税を差し引いた残額を
国に納めるという立ち位置です。
つまり、設備投資の際に負担した64万円は
③なら泣き寝入り、①なら税負担の軽減と
なるわけです。
しかし、そもそも論として、
③であれば預かった消費税を納めなくていいという
めちゃくちゃ好都合な恩恵を受けています。
この恩恵を捨ててまで64万円に固執するかどうかは
こちらも事前にシミュレーションすべき事案です。
ちなみに、「免税事業者」が自ら
「課税事業者」になることを選択すると
2年間は「課税事業者」であり続ける
必要が出てきます。
そして、今回の設備投資が税抜100万円以上の
“調整対象固定資産”に該当すれば、
取得から3年間は「課税事業者&原則課税」で
あり続けなければいけません。
ですので、シミュレーションする際には
2年間「課税事業者」になってまでも、
もしくは3年間「課税事業者&原則課税」に
なってまでも64万円の恩恵を取るべきか
どうかがポイントになります。
最後に
設備投資が1,000万円以上の場合には
注意が必要です。
一点で1,000万円以上のものを取得した場合には
それは“高額特定資産”に該当し、
①にしてそれを取得すると最低3年間は②や③に
戻れないという縛りがあります。
このあたりも慎重な判断が求められます。
こうした事案が出てきそうなときには
事前に税理士に相談してください。
とくに取得後では手が打てないことも
税金の世界ではあります。
事前の相談が思わぬ利益を生み、
事後の相談が利益の喪失となることを
強くお伝えしたいです。