消費税への提言シリーズ、第4弾です。

〜blog『relax&focus』より転載〜

現行消費税の問題点

これまでの記事の末尾に掲げた
現行(将来の)消費税の問題点は
以下のとおりです。

①納税者が負担した消費税が国に納められていない
②“非課税”によって支払った消費税が控除できない
③「インボイス方式」の導入
④軽減税率適用による現場の混乱
⑤金の売買が課税取引

④〜⑤の2つの解決策は前々回のブログで、
①と③の2つについては前回のブログで
記事にしました。

今日は②について。

非課税売上事業者が抱える問題

“支払った消費税”が控除できない

消費税には、その取引対象の特性や
政策上の配慮から課税されない取引が
15項目あります。

代表的なものは次のとおり。

・土地の譲渡、貸付
・住宅の貸付
・身体障害者用物品の譲渡
・社会保険診療収入
・学校教育

こうした取引によって
売上が計上される事業者は
他の一般的な事業者に比して
不利益を被っていることが多いです。

それは、「課税仕入れ」を行った際に
上乗せされた“支払った消費税”を
自身の納税額圧縮に使えないという点。

たとえば、診療所の例で考えます。

自費診療の場合は、患者さんから
消費税を上乗せした報酬を受け取ります。

保険診療の場合は、患者さんからは
消費税を上乗せしない報酬の3割を受け取り、
残りは報酬支払基金から受け取ります。
診療所には、消費税が上乗せされていない
診療報酬のみの金額が入ってきます。

両者いずれも、診療のための機材などを
業者から購入しています。

その際には、消費税を上乗せされた額を
納入業者に支払っています。

ここまでが前提です。

この場合、同じ50,000円の
診療であったとしても、
自費診療の場合と保険診療の場合で
利益額や利益率が異なってきます。

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これは、

「非課税売上」のために要した「課税仕入れ」について
“支払った消費税”は納税額の計算上控除できない

というルールが適用されているためです。

結果、保険診療や住宅の貸付を生業とする事業者は
仕入時に支払った消費税を自己負担する羽目になっています。

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自費診療との比較

課税売上とされる自費診療と比べると
キャッシュの残り方がことなります。

<自費診療の場合>

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<保険診療の場合>

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“非課税”という概念

前述したルール、

「非課税売上」のために要した「課税仕入れ」について
“支払った消費税”は納税額の計算上控除できない

これの存在によって上述の事態が生じています。

税の徴収側である国に視線をおくると、
「保険診療にはさすがに消費税かけませんよ」と
国民に寛大な心をみせつつも、
裏ではその一部をちゃっかり納付させています。

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消費税は「消費者に負担を求める」税金です。

であれば、消費者に対して「課税しませんよ」と
いうのであれば、国は税収を放棄すべきです。

つまり、たとえ「非課税売上」のための
「課税仕入れ」であったとしても、
そこにある“支払った消費税”は
控除を認めるべきです。

そうすれば、このようになります。

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診療所は、2,400円の税金が返ってきて、
結果として20,000円の利益が確保されます。

これで自費診療と平等になります。

解決策

「非課税」という概念をなくす

これに尽きます。

すべて「免税」とすればいいのです。
「免税」と「非課税」、響きは似ていますが、
消費税上の取扱いはまるでちがいます。

「免税売上」に要した「課税仕入れ」について
“支払った消費税”は控除できる

これが現行の制度設計です。

つまり、「非課税」ではなく
「免税」とすれば、
そのために“支払った消費税”は
控除対象になります。

これだけで解決するんですけどね。

そして、こうすれば、“支払った消費税”を
「どういった売上のためのものだったか」で
区分けする必要もなくなるため、
その課税構造も非常にシンプルになります。

シンプルでわかりやすい制度設計を
強く望みます。