法律の穴を突くこととモラルハザードとの境界線は難しい。

〜blog『relax&focus』より転載〜

賃貸マンション建設と消費税

不動産投資の一環として
賃貸マンションを取得して
家賃収入を形成するという
スタイルがあります。

賃貸マンションを更地に建設するとして
建設費が8,640万円(税込)とすると、
その中に含まれる消費税負担額は640万円。

この640万円が返ってくるとなると
うれしいですが、消費税の申告を利用して
それができるシチュエーションがあります。

まず、消費税の「課税事業者」で
ある必要があります。

そして、消費税の申告方式は
「本則課税(原則)」です。

そして、取得した課税期間の売上は
マンション脇に設置した自動販売機、
もしくはマンション駐車場の
賃貸のみにします。

つまり、賃貸マンションを貸して
家賃収入が上がる前に
課税期間が終了するように
建設のタイミングを図ります。

そうすれば、640万円は
国(税務署)から還付されます。

還付というのは税金が
戻ってくる、という意味の用語

消費税還付スキームの現状

この還付された640万円については、
消費税法としては元来認めたくないものです。

そこで、還付されてから2年後に国に再び
納めさせる法律を設けているのですが、
当時の法制度は脇が甘かったのです。

数年前までは法律上の正当な手続きを行えば、
ふたたび納める規制をかいくぐることができ、
この640万円は還付されっぱなしでした。

これが「消費税還付スキーム」と呼ばれたものです。

この仕組みは法律の穴を突いたものでしたが、
今はその穴にはフタがされています。

度重なる法改正によって
当時は存在した逃げ道がなくなり、
いったん640万円の還付を受けたとしても
2年後にはその大半を国に納めないと
いけないようになっています。

イタチごっことモラルハザード

ただし、イタチごっこの側面もあり、
この法律のフタにも
まだ若干の隙があります。

この法律をかいくぐるには
2年後の課税期間において
「課税売上」を一定以上
計上することが求められます。

そこで、2年後の課税期間で
「金の売買」を繰り返します。

この取引は消費税の課税取引です。

単一相場のためリスクのほばない
売りと買いを繰り返すことで
課税売上(のみせかけ)を増やし、
その640万円を国に戻さないように
してしまうのです。

最後に<私見>

ここからは人によって
意見が異なるところでしょう。

以下、わたしの考えです。

前述したように、法律の穴を突いて
正当な手続きを踏んだ上で
税金の還付を受けることは
なんら悪いことではありません。

しかし、法律のフタをかいくぐり
“実態のない取引”を繰り返し
税金の還付を受けるのは
モラルの欠如です。

「金の売買」だって正当な取引で
なんら不正ではない、という主張も
ある話だとは認識しています。

が、課税を逃れるために
本来必要のない取引をつくることは
どう考えても租税回避であって
まっとうな手段ではありません。

実行される方は「金の相場を見ていて
投資を始めただけ。このタイミングは
たまたまなんだ」とおっしゃられる
かもしれませんが。

“やったもん勝ち”を許さないためにも
国会においてはこうした仕組みを
一掃する法整備を望みます。

2年後にグループ会社から
従業員を転籍させて
元々在籍していた会社に
人を派遣する、とかで
「課税売上」をつくるのも
モラル的にはダメでしょうよ。

「獲得するために実態をねじ曲げる」

助成金制度なども
そうした性格が多分にあります。

これも企業努力といってしまえば
それまでですが、
そうした行為が横行することで
本当に必要な人のところに
届かなくなる可能性もあります。

国や地方自治体から受給するとなると
罪悪感がなくなりがちですが、
その財源を辿れば税金です。

税金が高すぎるよ、って嘆くのであれば、
まずはそうしたアンモラルな行為を
撲滅することを支えていきたいです。

応援したくなる国会議員が少なくて悲しい。