個人事業者の世界でよく言われる1,000万円の壁というのはいったい、、、

〜blog『relax&focus』より転載〜

1,000万円の壁

個人事業者の方々の間で
よく言われるのが
「売上が1,000万円を超えると
税金めっちゃもっていかれるで」
という話。

そこで、売上を1,000万円以内に
抑えようというマインドが働きます。

たしかにその事実は
間違ってはいないのですが、
これは所得税の話ではなく、
消費税の世界の話です。

所得税は売上ではなく利益に課税

所得税は個人の稼ぎに対して
課税する税金です。

個人事業者がその事業だけをしている場合には
その事業からの稼ぎが課税の対象となります。

稼ぎとは売上から経費を引いたもの。

そう、売上が1,000万円を超えるかどうかは
所得税額の決定に直接影響しません。

影響するのはあくまでも稼ぎ、
これを利益(所得)といいます。

売上が1,200万円で経費が800万円なら
利益は400万円です。

売上が900万円で経費が100万円なら
利益は800万円です。

この場合、後者は前者の倍以上の
所得税を納付します。

それは所得税が「累進課税制度」を
とっていて、稼ぎが多くなれば
その多い部分について高い税率を
課す仕組みになっているからです。

<関連記事>

累進課税の所得税、”だいたいの額”を覚えておくと便利です

所得税は売上ではなく利益に課税

という事実はおさえておきたいです。

売上1,000万円の壁は消費税にある

売上が1,000万円を超えるかどうかが
納税額に大きく影響してくるのは
消費税です。

消費税の世界では、
“売上1,000万円オーバー”が
トリガーとなって、
税負担が大きくなります。

2017年まで売上が1,000万円以下だった
事業者について検討すると、
2018年の売上が1,000万円を超えると
2020年の事業について消費税の
納税義務が発生します。

お客さんから預かった消費税から
仕入先(業者さん)に支払った
消費税を差し引いた残りを納める
というのが消費税納税額の
原則的な計算です。

仕入先(業者さん)に支払った
消費税を集計するのが大変なら、
預かった消費税の〇〇%を
国に納めるという簡易計算も
あります。

いずれにしても、事業から
お金が出ていきます。

この消費税はお客さんが負担して、
事業者は預かっているに
すぎないわけでして、
本来的にはすべての事業者が
納めるべきものですが、
小規模な事業者の事務負担を考慮して、
売上が1,000万円以下の規模の
いわゆる小規模な事業者については
「お客さんから預かった消費税を
納めなくていい」という、
ヘンテコなルールがあります。

売上1,000万円というのは
このヘンテコなルールの恩恵を
受けられるかどうかの境界線です。

例えば、2020年に本来納めるべき
消費税が50万円だとします。

2018年の売上が税込980万円の事業者は
2020年にこの50万円を納付しません。

が、2018年に売上が税込1010万円の事業者は
2020年にこの50万円を納付しなければいけません。

これが1,000万円の壁です。

50万円を納めなくていいという特例自体が
本末転倒なわけで、預かったお金は
国に納めるのが本来の姿です。

が、売上がぎりぎり1,000万円を超えそうであれば
“2年後の負担を見越して今年は仕事をセーブする”
というのも判断基準の一つにあってもいいでしょう。

このときに注意してほしいのは
事業で使っている車の下取りです。

下取りの場合、差額をディーラーに
支払うことになりますが、
消費税の計算では
下取り金額は売上になります。

この下取りを加算して1,000万円判定を
するということをお忘れなきよう。

<関連記事>

小規模事業者についての納税義務免除の話

<消費税>納税義務の免除制度vol.1 〜基本編〜

なぜ2年前の売上で判定するのか?

<消費税>納税義務の免除制度vol.2 〜基準期間はなぜ2年前なのか〜

最後に

売上をコントロールするというのは
自身の業績をタイムリーに把握していて
はじめてこなせるテクニックです。

コツコツ経理することで生まれる
メリットの一つともいえます。